新型インフルエンザへの対応について

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先週発表された、日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」(第2版)について。

ちょっと専門的かつ長くなりますが、一部を引用します。

以下引用~~~

 本年8月にWHOから発表されたS-OIV(新型インフルエンザ)の治療ガイドラインで最も重要な点は、オセルタミビル(タミフル)の投与により、肺炎のリスクが有意に減少し、入院の必要性が減ると明確に述べられている事です。S-OIVの大流行におけるノイラミニダーゼ阻害薬の役割は、季節性インフルエンザで周知のように発熱期間の短縮ではなく、重症化、入院、死亡を防止することにあり、治療の重要性は大きいのです。

 一方、軽症の健康小児、成人では、必ずしも抗ウイルス薬による治療は必要ないとされています。主要な理由はコストです。わが国のタミフルの備蓄率は世界では第4位であり、既に5000万人分以上が確保されています。人口の40%以上です。世界の多くの国では、健康小児、成人までも治療するだけのノイラミニダーゼ阻害薬の備蓄がないので、この勧告は、ある意味で現状を追認したものです。例えば、タイのノイラミニダーゼ阻害薬の備蓄は、国民の1%を治療する量しかなく(2009年7月時点)、健康小児、成人を治療することは全く不可能です。一方、わが国における第1波では人口の20%が感染・発症すると見込まれているので、投与可能な量は既に十分確保されているのです。基礎疾患のない若年健常成人でも重症化して死亡する例が報告されている今回のS-OIVでは、S-OIV感染が少しでも疑われたら可能な限り早期から抗インフルエンザ薬を投与すべきです。そのことによって、予想されている病室の不足、レスピレーターの不足、抗菌薬の不足が少しでも解消されるはずです。なお、余裕があればその分を発展途上国に援助することも考えるべきです。

~~~引用終わり

平たく言うと、今までのインフルエンザでは使っても使わなくてもよかった抗ウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬:タミフル&リレンザ)を新型インフルエンザの場合は、入院や死亡を減らすために積極的に使いましょう、という話です。日本では季節性インフルエンザでも、ほかの国に比べてかなり抗ウイルス薬を使用する際のハードルが低かったので、新型ならなおさら受け入れられやすい提言だと思います。しかし、ここまで明確にハードルを下げる(なくす?)と、賛否両論でそうですね。

個人的には、季節性インフルエンザでは、健康な小児・成人へのタミフル処方にどちらかというと消極的だったかもしれません。新型については、まだヒトでの感染がはじまって一年に満たない感染症ですから、分からないことも多く、これから変化していくこともあるでしょう。当院では、新型インフルエンザの流行が始まってから診断したすべての人(ほとんど若くて元気な人)に抗ウイルス薬を処方しています。引用で触れられているとおり、抗ウイルス薬の備蓄や保健制度に関して、日本が特に恵まれているからこそできることですが、今後は積極的に薬をおすすめすることになりそうです。

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