臍帯血移植を受けたYさんにおごってもらう。

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先日、とてもうれしいお誘いがあり、都内某所でお寿司をごちそうになりました。

誘ってくれたのは、ふたりの女性。ひとりは再生不良性貧血の患者さんで一度登場してもらった2年目ナースのKさん。もうひとりは2回の移植を経験し、今は元気なYさんという方。このふたりは、日本医大の血液病棟に同時期に入院していた縁で(親子ほどに年が離れているけど)今でも時々一緒に遊んでいる仲良し。

今回はYさんの話を。Yさんは50代半ばで悪性リンパ腫を発症、3年前に一回目の造血幹細胞移植(自家末梢血幹細胞移植=自分の細胞を使った移植)を受けました。しかし残念ながら再発し、今度は治療をしても寛解(一時的にでも病気が消えること)にならない。このままの治療を続けていればいつかは限界がくることは明らかでしたので臍帯血移植、という提案をしました。当時のYさんの状況(再発後でしかも病気が消えていない)では、臍帯血移植は無謀という人がいてもおかしくはなかったし、実際そういう意見も医療スタッフ側から出ていました。それでもご本人、ご家族、主治医(僕が知る限り最も熱い男)の熱意と結束力で臍帯血移植へ突入。僕もその主治医と一緒にYさんを毎日診察していましたが、移植後しばらくは、それまでつらい顔を見せたことのなかったYさんが、かなりきつそうにしていたのを覚えています。
食事の席で「移植後2年くらいはつらかった」と明かしてくれたYさん。元気になってきたと実感できたのは、やっとこの半年くらいだそうです。それでも移植を受けてよかった、迷っている人がいたら「私のような人がいる」と言ってあげたい、とYさんは言ってくれました。そして、同じ臍帯血移植を受けた者として、本田美奈子さんのことは本当に残念でならない、とも。

EBM(根拠に基づく医療)の観点からは、もしかするとお薦めできない治療だったのかもしれません。当時のYさんの状況では、施設によっては、臍帯血移植が治療の選択肢としてあげられなくても全く不思議ではなかったと思います。正直なところ、同じような条件であれば、うまくいかない方のほうが多いのは事実です。それでも、移植をした。その結果、こうしてお寿司をおいしく食べられるまでに回復してくれた、と思うと感激でした。もちろん、一番すごいのは50代後半でつらい治療を乗り切ったYさん本人、次にそれを支えたご家族です。そして、かつて僕もその一員だった、日本医大の造血幹細胞移植グループ・病棟スタッフを誇らしく思います。

写真は、その力強い女性ふたりの握りこぶし。左がKさん(お誕生日おめでとう!)、右がYさんです。別に殴りかかろうとしているわけではありません(笑)。
もしかすると「患者さんにおごってもらうとは、何事か!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は大学病院を辞職しているので(医者患者関係は過去のものとして)、ありがたくご馳走になりました。現役で大学病院でがんばっている仲間には悪いけど、役得、と思っています(笑)。Yさん、ごちそうさまでした!

この記事へのコメント

musume
2005年12月09日 00:43
こんばんわ。その節は母(某Y)が大変お世話になりました!
先生のことが相当嬉しかったようで、ココを見てほしいと
さっき電話で催促してきて、はじめて遊びにきました★

母は本当にラッキーでした。いい先生方、いいチャンス、いい友人。
今ではワタシよりも元気になりましたっっ

これからも母のわがままにお付き合い頂けると幸いです。
また、同じ悩みを持っている方の為にも
お力添えをお願いいたします!
2005年12月09日 01:09
musumeさん、ありがとうございます。
Yさんが臍帯血移植を決断するとき、やっぱり一番心強かったのはご家族のひとことだったと思います。
>今ではワタシよりも元気になりましたっっ
そうかもしれません(笑)。移植後しばらくは外来で点滴をしていたり、大変だった印象が強かったものですから、久々にお会いして本当にお元気でびっくりしました!
医者としてこれほどうれしいことはないです。
こちらこそ、今後もよろしくお願い致します。
hashimoto
2005年12月14日 02:12
中村先生、ご無沙汰しております。
YさんもKさんもお元気なのですね。時々うわさに聞いていたのですが、僕が全く大学にも行かないので最近は情報が無くとても気になっていました。いま先生のブログでお二人の近況を知って感激しています。
またお二人に会うことがあれば、よろしくお伝え下さい。またお二人がもしこのコメントを見ていたら、本当におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
2005年12月14日 08:59
うわっ!熱い男、ここ見てくれてたんだ(笑)ありがとう。
今はお互い移植の現場からは離れてしまったけど、こうして元気でいてくれる人がいると、本当にうれしいですよね。もちろん、Yさんはhashimoto先生にものすごーく感謝してたし、会いたがってたよ。次は是非、ってことで。と言うか、なんでhashimoto先生を差し置いて僕が呼ばれてんの、っていうハナシですよ(笑)また、会いましょう。

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